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アルコール・チェックの義務化について         岡本成史

外国人労働者の問題とは直接関係はございませんが、自動車を一定台数以上保有されている事業者の方に関係する問題として、アルコール・チェックの義務化について解説いたします。

これまで、バス、トラック、タクシー、ハイヤーなどのいわゆる「緑ナンバー」の自動車(事業用自動車)の運転者についてはアルコール・チェックが義務付けられていまいましたが、道路交通法の改正により、自家用自動車(白ナンバー)しか使用していない事業所でも、一定の要件を満たす場合には、運転者のアルコールチェックが義務化されます。

 

「安全運転管理者」等の選任

一定台数以上の自動車を使用する事業所において、自動車の、安全な運転に必要な業務を行う「安全運転管理者」を選任し、事業所を管轄する警察署に届け出る必要があります。

「安全運転管理者」を選任しなければならないのは、次の要件に該当する事業所になります。

① 乗車定員11人以上の自家用自動車(白ナンバー)を1台以上使用している事業所

② 乗車定員10人以下の自家用自動車を5台以上(自動二輪車(50ccを超えるもの)は0.5台として換算)使用している事業所

また、自家用自動車を20台以上使用している場合は、20台ごとに副安全運転管理者をさらに選任する必要があります。

 

安全運転管理者は、次のような安全運転管理業務を行わなければなりません。

① 運転者の状況把握

② 安全運転確保のための運行計画の作成

③ 長距離、夜間運転時の交替要員の配置

④ 異常気象時の安全確保の措置

⑤ 点呼等による安全運転の指示

⑥ 酒気帯びの有無の確認

⑦ 酒気帯びの有無の確認内容の記録・保存

⑧ 運転日誌の記録

⑨ 運転者に対する指導

 

アルコールチェックの義務化

今回の改正により、前記のとおり安全運転管理者の業務として、運転者の酒気帯びの有無(アルコール・チェック)の業務が拡充されました。冒頭に記載しておりますとおり、従来から事業用自動車(緑ナンバー)の運転者についてはアルコール・チェックが義務付けられていましたが、今回の改正により、自家用自動車の運転者についても、新たにアルコール・チェックが義務付けられたことになります。

 

安全運転管理者は、令和4年4月1日からは、運転者のアルコール・チェックを目視で確認(顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などなど五感の作用を用いて確認)すること、酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存することが義務付けられています。

更に、同年10月1日からは、目視に加えてアルコール検知器による酒気帯び確認も義務付けられ、またアルコール検知器を常時有効に保持することが義務づけられることになります。

 

アルコール・チェックは、運転業務の開始前と運転業務の終了後の2回実施することが必要です。運転者が出張先から直行直帰して対面で確認できない場合には、例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、カメラ・モニターなどによって、安全運転管理者が運転者の顔色・応答の声の調子などを確認するとともに、運転者が自ら行ったアルコール検知器による測定の結果を確認するなどの対面の確認と同視できるような対応が必要です。メールやチャット等で報告させるのみですと五感の作用により確認することができませんので、不可となります。

酒気帯びの有無の確認を行うのは安全運転管理者となりますが、安全運転管理者の不在時など安全運転管理者による確認が困難である場合には、安全運転管理者が、副安全運転管理者又は安全運転管理者の業務を補助する者に、酒気帯び確認を行わせることは差し支えないとされています。ただし、安全運転管理者と運転者の就業時間が異なるため、安全運転管理者による確認ができないことが、常態化するのは問題です。誰が安全運転管理者として適任なのかという点から見直しを図る必要があります。

 

以上の通り、要件に該当する事業所は、

① 安全運転管理者・副安全運転管理者を選任すること、

② アルコール検知器を準備すること、

③ アルコール・チェックの記録の作成・保管体制を整備すること

が必要になります。

 

弁護士 岡本 成史