今年は、夏の参院選挙、そしてアメリカが毎年出す「人身売買レポート」のタイミングが重なり、世間は慌ただしく「技能実習生廃止」と声を出す。その中身は、技能実習生は、現代の奴隷制度だ、とか強制労働であるとか様々である。私は、この業界に15年程身を置き、技能実習生が未だ外国人研修生と呼ばれる時代から彼らと接し、幾度の法改正も経験してきた。7月26日の日経新聞の記事には、出入国管理庁の調査によると日本へ入国してくる技能実習生の借金の額を、送る出す国別に平均金額を割り出し、来日するまでにおよそ55％の人達が母国で借金をしてくると伝えた。その調査の内訳は今年の4月からの5か月間でベトナムなど6か国の2200人余りを調査し、そのほとんどから回答を得たというもの。結果としては83％が来日前に、仲介業者や送り出し機関にお金を支払い、その平均額は54万円だった。それでは、その54万円に付いて私の経験からですが、凡その明細を分析したいと思う。先ず、日本企業からの募集を見て、職種や賃金等を確認し、面接に応募参加する。仮に合格すると、その後送り出し機関の学校に入校します。その殆どは全寮制で、日本とベトナムの二国間で定められてカリキュラムを数か月掛けて勉強します。其処までに必要なお金は、在ベトナム日本大使館からも通知が出ているように日本に行くのにいくら支払いますか？ | 在ベトナム日本国大使館 (emb-japan.go.jp)2国間で定められた金額があります。それ以上不必要な金額を徴収するような事が有れば、送り出し機関としてのライセンスを取り消される事になります。とはいえ、日本企業ででも同じことが言えますが、ルールを正しく守らない送り出し機関がある事は確かです。しかし、報道されている様な殆どの送り出しが違法だとか、技能実習生皆が人身売買されて日本に来ている訳ではありません。分かりやすく例えるならば、技能実習生が働いている企業の7割が何らかの労働基準違反を犯していると報道された内容は、技能実習生がいる会社だけがそうであるかの様にとらわれがちですが、その様な会社は実習生が居ようと居まいと労基法違反を犯しているのです。さあ、技能実習生が居ない会社の皆さん、あなたの会社の労働基準は適切ですか？

さて話を元に戻し、ベトナム大使館の注意喚起の文書の中に記してある、日本へ実習生として行く為に幾ら必要かという事ですが、実習生として日本へ行くことを希望する人へ送り出し機関が請求出来る手数料金額は、3,600usd（￥489,600　2022/7/28現在）以下です。その他事前教育費は59000000vnd(￥342289　2022/7/28現在)以下と定められています。これらの金額を合計すると日本円で80万円程の金額になります。これらの金額はベトナムの法律で定められた上限金額で有り、もちろん総額で5,000usd以下の送り出し機関も沢山あります。実習生達は自分で、情報を集め送り出し機関と職種を自分達で決めて応募して来ているのが殆どです。「人身売買」とは程遠いものと考えます。最近の記事で「強制労働」という表現もありましたが、先に述べた様に募集を見て自分で希望して面接に参加しているのです。決して「強制労働」ではありません。しかし、残念な事に岡山の事件の様に実習生達を奴隷の様に扱う企業が存在するのも事実です。この様な問題は、あってはならない事ですし、決して許される事ではありません。家族の為に、外国語を学び自国以外の国で働くというリスクを、果たしてどれだけの日本人が挑戦できるでしょうか。そんな決心をしてまで日本で働こうと考えている人達が、母国で借金をしているからという理由だけで、実習先の企業から失踪するでしょうか？失踪する理由は、すでに入国管理庁は把握をしているでしょうが、その多くは借金だけではなく日本に潜伏している不法滞在のベトナム人ブローカーの存在である。彼らが言葉巧みに、今の仕事よりも沢山稼げるなどと誘い出すケースが多い。もしくはベトナム人のSNSを通じネットギャンブル。ネットギャンブルにより日本で借金を作り、それを返すために仕方なく失踪を装い、違法な仕事に加担させられる。なぜ我々がその実態を把握しているかというと、失踪した後、不安になり管理団体の通訳や元同僚に相談して来るからである。安に借金だけが理由で失踪するなどと決めつけずに核心に触れる調査を行うべきである。勿論、受け入れている企業の態度や、管理団体の杜撰さも否めない。すぐ目の前まで来ている、日本の労働生産人口の減少で日本の将来を真剣に考えるとおのずと答えは出て来ると思います。外国人を受け入れる事が望ましくないと考えるのであれば、すべての労働生産が、日本人だけで賄えるのが望ましい。しかし、岸田政権の「成長と分配」で照らし合わせると、深夜のコンビニの時給は、￥3,000/1ｈ位は必要では無いでしょうか？正しく外国人労働者を受け入れ、正しく接する環境を整え、正しく日本の法律の基で生活できる様、我々日本人が考え方を改めるべきであると私は考えます。