日本の人口問題と外国人との共生を考える4公益社団法人 国際人材革新機構(iforce) 代表理事CEO 樋口 公人
- 2021.06.29 | コラム
日本の人口問題と外国人との共生を考える 4(コラム)
1.外国人技能実習制度-新たな在留資格「特定技能」の創設-
ところで、先ほど81万人の外国人労働者を見込まないと、2030年の644万人の労働力不足は埋められないという推計結果を示した。この数字は、女性や高齢者の活用と生産性向上による労働力の実質的増加を最大限見込んだうえでの推計であるから、実際には81万人以上の外国人労働者を見込まざるを得ないと考えられる。現状で、「就労している外国人」は100万人以上存在するが、うち労働力として在留が正式に認められているのは「専門的・技術的分野」の高度人材のみである。原則として外国人労働者を積極的に受け入れない立場をとっていることから、フォーマルな形で労働力としてカウント可能な外国人労働者では、人手不足は補えていない。また高度人材は、一般的に労働集約的な工場ラインなどでは在留資格上、原則就業できないことになっている。それらのことから、高度人材だけでは人出不足は補うことはできず、実際には「技能実習」のような形で、高度人材以外の労働力に変わる形式で受け入れざるを得なくなっている現実がある。
外国人技能実習制度は、「技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、母国の経済発展を担う人材育成に寄与する」ことを目的にして、労働者としてではなく、実習生として外国人を日本の企業等に受け入れるというものである。実習実施者(企業等)が海外の現地法人や取引先企業の職員を直接受け入れる「企業単独型」と、事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が受け入れてその監理監督のもとに実習実施者が実習を行う「団体監理型」がある。技能実習生には、入国1年目に「技能等の習得」を目指す「技能実習1号」、入国2・3年目に「技能等の習熟」を目指す「技能実習2号」、入国4・5年目に「技能の熟達」を目指す「技能実習3号」という「在留資格」が与えられ、最長5年の滞在が可能となる(更新を繰り返して最長5年。在留資格の更新・変更の度に審査及び技能評価試験がある)。技術・技能の習得が目的であることから、転職、家族帯同は認められていない。実習実施者サイドも、技能実習の目的に反するような取り扱い、単純労働や実習計画にはない作業をさせてはならないことになっている。しかしながら、実際には労働力としての位置付けになっているのが実態である。そのため、人出不足に悩む産業界の意向を受けて、平成31年4月より「新たな在留資格」として「特定技能」を創設し、「真に受入れが必要と認められる人で不足分野」にて、長期滞在・就労が可能な外国人人材を受け入れることとなった。
この「特定技能」は、技能実習3年を経るか、または試験(日本語能力及び技能評価)を合格することによって資格を得ることができ、転職可能で在留期限が最長5年の「特定技能1号」、転職可能で、要件を満たせば、家族帯同可能かつ在留期限の制限がない「特定技能2号」から成り、2号を取得すれば、在留を延長し続けることができ、永続的に日本で働くことが可能となる。
こうしたなかで、実質的な労働力として日本にやってく特定技能外国人人材は転職が可能であるため、比較的賃金高い大都市集中、職種内容による単純労働分野の対象範囲の拡大、日本での生活問題、日本語こ能力の問題、企業への監督強化をどうするかといった課題やそれ以外にも様々な課題が浮き彫りになっている。とりわけ、「特定技能」は試験に合格すれば、入国が可能になり、2号になると在留期限もなく家族帯同も可能ということになるので、もはや完全な移民ということになるのではないかと思う。さらに長期に滞在すれば、年金や医療など、社会保障も含めた生活全般をどうサポートしていくかが問われることになる。 |
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樋口 公人