これは、 田添史郎
- 2022.06.14 | コラム
これは、ある経済誌の記者から記事について意見を求められた際に、メールでやり取りをした内容の一部である。私からの回答しか記してないので、理解し難い点もあるかと存じますがリアルな内容として、私が率直に思い考えている事として受け取って頂ければ幸いである。ここでは意見を求められた原文で私が気になった幾つかの表現に番号を付けその内容について意見を述べさせて頂いた内容である。そのライターや、記者を特定されてしまうと迷惑が掛かるので原文は控えさせて頂きます。
① 単純労働という表現は間違っているのではないでしょうか。その時点で筆者は外国人労働者を見下げているような気がします。専門分野でもベトナム人や中国人のエンジニアが日本人よりも高い給料で働いている人達は福岡にもたくさんいます。単純労働は日本人にもいますし、日本の高度経済成長期を支えてきたのは彼らのお陰です。
② 雇用調整が容易とありますが、どのような意味で容易なのでしょうか?日本で定められた法律の中では、日本人雇用も外国人雇用も容易ではありません。建前と実体の乖離が大きいと記してありますがその乖離差がどの程度なのでしょう建前にほど近い外国人労働と乖離差が大きい外国人労働者の生活環境をご自分で体験された事があるのでしょうか?もし、乖離差が激しい企業の日本人労働者も劣悪な環境で働いているのでは?
③ 専門性・技能を有した即戦力となる外国人を入れていくとありますが、日本の法律には「高度人材」という制度があり、その様な人材を採用したいのであればその制度を利用すればよいと思います。高度人材ポイント制とは? | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
④ 「現代の奴隷制度」これは、アメリカの人身レポート2021年人身取引報告書(日本に関する部分) – 在日米国大使館と領事館 (usembassy.gov)の中に記してあり、その中に紹介してある指宿昭一弁護士は共産主義者である。私は在福岡ベトナム領事館の領事と面談した際に先の「2021人身取引報告書」について、ベトナム政府はどの様に考えているのか尋ねたことがあります。その答えは、「アメリカは彼(指宿弁護士)をヒーローと呼ぶが、それはアメリカの立場でものを言っているだけであり、そもそも奴隷制度の歴史があり、人種差別が強く残っている国の意見に過ぎない。ここ10年程のベトナムからの実習生の入国数を見てもらえば、日本とベトナムの友好関係は理解できるはずだ。」と仰ってました。
⑤ 特定技能外国人を受け入れる際に、外国人材と企業が雇用契約を結び、報酬額が日本人と同等以上と書いてありますが、この点については技能実習生制度も同じであり、申請時に同等の技量・経験年数の日本人社員の賃金台帳を提出する必要があるので、安価な使い捨て労働者として扱われるのをふせぐねらいが伺えるという表現は間違いです。
⑥ 特定技能制度について募集・採用から支援に至るまで内製化しているとあるが、特定技能制度の協定国と募集・採用・支援をどうやってやるのでしょうか?特定技能制度は悪質なブローカーを排除し健全な運営を目指しているのでしょうが、結局は募集国では技能実習生制度と同じ送り出し機関がその役割を担っているに過ぎない。受け入れる企業はどうやって送り出し機関を探し言葉の壁を乗り越え、面接・採用するのでしょか?そんな簡単なものではありません。何かものを仕入れたり買ったりする様に扱うのと同じ様に考えてませんか?募集・面接・採用こそきちんと時間を掛けてやらないと、それこそ一山幾らの奴隷と変らないと考えます。ベトナム人の気質をよく理解していない企業がベトナム人労働者を上手く使えるはずがありません。そもそも、ベトナム本国でも就職そのものは2~3年で転職するのが普通なのに日本で長く働いてもらおうと考えている事が間違いです。長く働く人材を確保したいのであれば、日本人社員の待遇を手厚くすれば良い。日本の経営者はコストカットばかりを気にし、カットしたコストを再投資する事までは考えていない様な気がします。優秀な外国人材を確保するのに費用を抑えると考える方が間違いである。ならば、優秀な日本人社員を安い費用で確保できるでしょうか?国が違うから優秀な人材を安く確保できる考え方は見下げた考え方ではありませんか?技能実習制度も特定技能制度も厳格な法令順守を求められています。しかしながら、日本の人材不足に目を付け業界ごとに色んな○○機構や○○省のキャリアアップシステムの導入、認可法人○○〇技能実習機構などへの加入を求められるなど、日本政府は悪質なブローカー排除を目指しているはずなのに、何故かお金がかかる団体が介在してくる。資金力がある企業は良いが、一番人材不足の中小零細企業は対応できるでしょうか?このままでは長期的には日本全体の利益にはつながらないと考えます。
以上の様なメールのやり取りをさせてもらった。今回やり取りをさせてもらった記者は、ネットで情報を集めそれを纏めて作り上げる様な姑息な連中とは違う一面があり、自身でも以前から外国人との交流に積極的に活動されてきた人である。
田添史郎